鑑定評価書とは?
不動産鑑定士は、国土交通省の監督を受けて業務を行っています。具体的には「不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年7月16日法律第152号)」や、「地価公示法(昭和44年6月23日法律第49号)」の規定によって示された事項を明示する鑑定評価書を作製します。
「不動産の鑑定評価」とは土地もしくは建物またはこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することを言います。
その場合、所定の必要的記載事項の外、次のことを明示することとされています。
地価公示地価格を基準とすること、鑑定評価額の決定の理由には、採用した資料およb土地の客観的価値に作用する諸要因を明らかにし、これらと鑑定評価額との関連を明確にすること。
したがって、価格をズバリ表示するためには、綿密な調査によって求めた資料と価格を求めるまでの根拠を表示することが鑑定士の仕事になります。これらの事項に不備があったときには不当鑑定として、懲戒事由(最悪は1年以下の懲役と資格の剥奪)になります。
それだけ厳密に求めた不動産鑑定評価書は、公的機関(裁判所、税務署、地方公共団体等)にも通用するものです。
下の写真のように、通常はA4サイズ20~80ページの書類となります。
案件の内容にもよりますが、評価書の提出までには、通常、3週間程度の期間をいただいています。
相続税の路線価とは何?
税務署が毎年8月に発表する相続税路線価は、その年に相続税や贈与があった人の申告基準となります。
相続税は不労所得について課税をするものですから、資産をもらったときの時価で課税します。
そして国税である以上、全国一律の評価基準で公平に課税されます。そのため、全国の基準を統一する必要性から地価公示地の価格の8割を目安として価格を決めることになりました。20%の差は一年の間に地価が上下したときの余裕を見たものです。
相続税評価自体は相続税がない人にはあまり関係のない評価額です。
しかし、地価公示地が1平方キロ1地点と「点の評価」であるのに対し、相続税路線価は市街地の多くの路線に価格が表示されている「面の評価」となっています。そのため、取引の際に参考とされる人が多いのも事実です。
ただし、評価額には次の特性がありますから、自分の土地に置き直すとき注意しなければなりません。
* 相続税路線価は、その路線に面する標準的な(整形)土地の価格であること
* 地積も、標準的な(住宅地では100~200㎡)土地の価格であること
* 相続税を計算するときの加算率や減価率等は全国一律のため、取引の際の加算率とは一致しないことが多いこと。
* 相続税路線価の価格発表は毎年8月、価格時点は1月1日です。路線価図は必ずタイムラグを含んでいること。
* 地価公示価格の8掛けを目安としていること。したがって、個別格差の良い土地(角地や商業地で間口の広い土地等)は路線をかなり上回る価格でも売れることが考えられます。一方個別条件の劣る土地(地積が大変に大きくそのままでは住宅地にならない土地、路地の奥の袋地、形状の悪い土地、崖地を含んでいる土地等)は、路線価を下回る価格でも売れないことがありえます。
あくまで参考にするだけで、個別の価格は不動産鑑定士にご相談ください。
不動産鑑定士の仕事は?
不動産鑑定士の仕事の主なものは、不動産の価格を示すことです。
その価格を基にした付随的な業務として、最近は不動産の有効活用や再開発等のコンサルタントと業務が広がっています。
鑑定評価書の利用方法は様々です。
- 税務署や固定資産税の課税基準を求めるために標準画地価格の評価
- 担保物件の評価
- 再開発事業の施行前後の画地の評価
- 区画整理事業の施行前後の画地の評価
- 相続財産分割のための評価
- 財産分与のための評価
- 日照権等損害賠償額を決めるための評価
- 競売物件の評価
- 下水や地下鉄等、地下や空中を占用するときの区分地上権評価
- 会社資産の再評価(時価評価)
- 同族会社や取締役間の取引の基準価格評価
- 相続税や固定資産税の評価を見直してもらうための評価
- 破産や会社更生法、民事再生法を適用するときの評価
- 抵当証券発行するときの評価
- 借地と底地の交換のための評価
- その他不動産の有効活用の予備調査-
- 不動産の調査業務として、固定資産税のチェックも行っています-
土地の価格はどこで調べられますか?
土地取引の指標として国が発表しているものに、国土庁の地価公示制度があります。
全国に2万地点以上の標準地を設定し、1地点ごとに不動産鑑定士が調査します。毎年1月1日の価格を3月下旬に発表しています。
この公示価格は、国や地方公共団体が土地取引をする時には、基準としなければなりません。そのため、一般の方がその地域の取引をする際の指標として使われます。
また、公示価格は相続税路線価や市町村の固定資産税評価にも基礎として使われます。
地価公示価格を補完するものとして、半年ずれた7月1日時点の価格を示す県基準地価格があります。こちらは埼玉県が担当し9月下旬に発表されます。
公示地等の価格は、市町村の都市計画課窓口のほか、埼玉県住宅都市部開発指導課でも見ることができます。
不動産鑑定士はどんな資格ですか?
不動産という国民の大事な資産はまったく同じものがないために価格(価値)が分かりにくいものです。
その価格判定をする専門職業制度は昭和39年に生まれました。不動産の価格を表示することを認められた国家資格です。
その後約40年を経て、全国では6,000人以上の不動産鑑定士が活躍しています。
不動産鑑定士になるには、短答試験と論文試験という2つの関門に合格しなければなりません。
さらに、試験合格後1~3年の研修を受け、認定されて初めて不動産鑑定士として登録されます。
不動産鑑定士の役割は、国民生活の活動基盤である不動産を調査し、その価値を価格という鏡に映し出して経済活動の指標を示すものです。具体的には不動産鑑定評価書を発行したり、その価格を基に有効活用方法を提言していく仕事です。
鑑定評価書はいつまで使えるのですか?
不動産の価格も、他の財産と同様に景気や周辺の状況で変化していきます。
そのため、鑑定評価書はその時点におけるその評価条件を基にした不動産鑑定士の意見価格です。
「経済は生き物」です。同じものが来年も同じ価値を持つかは分かりません。( ※1)
また、不動産を分割しようとしているときには、評価条件によっても変わります。間口2mの土地と角地では同じ価値と見る人はいないでしょう。
( ※1)地価が落ちついてきたとはいっても、少しずつ変化しています。半年前の地価は数%~数%違ってくることもありうるのですから、検討する時には最新の価格を求めるべきです。鑑定評価書有効期限は、数ヶ月と思っていた方が説得力があります。
鑑定士によって不動産取引相場に対する見方も少しずつ違います。強気の相場観を持つ人は条件の良い物件を比較的高めに見ます。売りやすい物件なら高くても売れるだろうと思うのです。
一方、弱気の鑑定士は売りにくい物件の減価率を大きく見ます。同じ条件でも5~10%の差は出てしまいます。
中古の乗用車も型式が同じであっても価格が色々です。売りやすいものであるかだけではなく、その地域やその業者によって値段はまちまちです。
株式や自動車とは違って不動産は2つと同じものはありません。
工場で作れるものと違って、不動産は千差万別ですから、ある程度、評価が違うのは仕方ないことです。
株式市場を考えてみてください。朝一番の寄りつきの価格よりも、その日の終値が5%以上値上がりすることはよくあることです。朝一番の価格が誤りでもなければ、終値も決して高い価格であったとは言えないでしょう。いずれも相場で形成された適正な価格なのです。
不動産についても、同じことが言えます。どの価格でなければ誤りとは言えず、相場として少し幅があるといえるでしょう。
不動産鑑定士は、それぞれの経験と知識、情報を背景にしていろいろな角度から不動産を見つめ直します。その結果、不動産市場の中でその不動産がどの辺にあるべきかを判断し、自分の良心に従って価格を決定します。相場観に多少の差がある以上、価格も数%の差が出てくるでしょう。
不動産を買うときに何を注意したらよいのですか?
かなり地価が下がったとはいえ、不動産はまだまだ高い買い物です。
普通の人は不動産を一生に何回も買うことはありません。スーパーで買う大根なら、悪ければ良いものとすぐに交換してくれます。家に帰って大根が不味い事が分かっても、「まぁ、しょうがないか」と諦められるでしょう。
しかし、不動産は年収の何倍ものお金を出して買うものです。悪いところが後日分かっても取り返しがつきません。その不動産にはどんな特徴があるのか、その契約はどんな内容なのか、後で問題は起きないだろうか。チェックすべき点は数多くあります。
- 売り主は信用できるだろうか
- 境界ははっきりしてるだろうか
- 地盤は安定しているだろうか
- 今、建っている建物に不具合は無いだろうか
- 自分の考えている建物は建つのだろうか
- 周辺の地域は、将来どうなるのだろうか
- 役所の書類に書いてある意味が分からない
生活を支える不動産には多くの疑問が生じます
最近は、土壌汚染の問題も注目されています。昔はなかった化学製品、企業活動には便利でも健康に有害なものも数多くあります。
2003年2月15日施行された土壌汚染対策法は、有害物質がある土地は開発させない、原則として所有者が汚染物質を除去することとしました。
畑として耕作するだけなら、1m以上深いところの土はほとんど関係ありません。
根が伸びるのには限度があるからです。しかし、地下室を造るときには4mくらいは掘ることがあります。汚染された土は他へ持っていっても喜ばれません。無害なものにするためには多額のお金がかかります。汚染物質でなくても、建設廃材が埋まっていると、地盤が安定しないことがあります。何年か後に建物が傾いては大変です。
その土地がどんな土地なのか、表面だけをいくら見ても分からないことが結構あります。
しかし、一般の人にはすべてをチェックすることはできません。
自分の分からないところは、恥でもありませんから専門家に確認しておくほうがよいのです。建築のことは建築士、登記のことは司法書士、不動産の取引のことは宅建業者、一般的な法律問題は弁護士、不動産全般のことなら不動産鑑定士に尋ねておくことが転ばぬ先の杖になります。
お問い合わせ
CONTACT
不動産評価とコンサルタント。
不動産に関するトータルアドバイザーが弊社の仕事です。
お電話
049-222-7374
営業時間:10:00~17:00
FAX
049-226-2927
メール